
同じ場所に立っていても、同じ時間を共有したとしても、
そこに居合わせた一人ひとりが、それぞれの側から物事を覚えていて、
その集合体として記憶や文化が成り立っていくという仕組みに興味があります。
これまで、考えや言語が多様であることの奥行きについて、
また、時間の経過の中で失われるものと浮き彫りになっていくものについて、
美術を介して考えてきました。
言葉にならない気持ちや、
どうしたって理由が納得できない出来事がこの世にはあり、
それらとどうにか向き合っていくために美術があると感じます。
特定のことについて直接話さなくても、思いを形にできるという
そんな美術の奥深さに、今までどれほど救われたかわかりません。
いつかまた会ったときに伝えたいことがあると感じながら
この向こう側に誰かを見送る時に、
それぞれの側ではどんな風景が見えているのだろうと、いつも思います。
見送った人の数がだんだんと増えたり、
言いたいと思いながら伝えられなかった言葉が多くなっていくことも、
それはどれも時間が流れる中では自然の摂理なのでしょう。
ずっと聞きたいと願っていた話や、
あの時見ておきたかったと思う風景の本当の意味なんてものは、
時間が過ぎてからしか伝わらないことが多いと感じます。
私が取り組みたいと思っているプロジェクトは、
結局は答えのわからない問いについて、
ずっと考え続けるための口実のような、味方のような、
そんな存在なのだろうと思います。
本のページを一枚一枚めくるように、だんだんとわかることが増え、
もしかしたら同時にわからないこともより深まって行くのかもしれません。
様々な事や場所と向き合い、それぞれを自分の中に取り込んで
思考しながら生きていこうと思うことが、
言葉にならない気持ちと表現することの間に存在する人生なのではないかと
実感します。
会場に並んでいる作品が、
いらして下さった方の心の中にあるいつかの記憶や、
何となく覚えている風景と重なる時があるとしたら、
それが今日であっても、数ヶ月後であっても、
何十年も先のことであっても、
それが美術の面白さなのだろうと思います。
皆様の時間の流れと、私の変化を持ち寄って、
いろんなお話ができるのを楽しみにしています。
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宇田奈緒 個展/Nao Uda solo show
"This Side of The Story"「あの物語のこちら側」展
2013年4月9日(火)-21日(日)
火-土11:00-22:00/日11:00-18:00(15日(月)は休廊)
gallery and cafe fu
〒231-0868 神奈川県横浜市中区石川町1-31-9
070-6429-8597(ギャラリー)
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