場所と文化
2007年 11月 17日
まだ写真がない時代に、
写真に勝るほどのリアルさで絵を描いた人たちがいて、
そんな人たちが見ていた光や影は、
私が写真を撮る時に惹かれるものと、とても似ていた。
主人公の後ろに描かれている風景や、
ちょっとした室内の様子にも、
時代とか文化は溶け込んでいて、
アーティストが生きている場所や時間は
知らないうちに作品の一部になる。
日本人の、とかオランダ人の、とか
そういう区分はあえて気にする必要はないんだと思うけど、
ある文化の中で育って、
その空間の中の共通の認識とか常識とか、
そこに住む人が一緒に体感した歴史とか、
似たような考え方とかがまずあって、
その上で一人一人が体験した人生が生きてくるんだろうと思う。
フェルメールの絵の中に描かれた壁のタイルとか、
牛乳の容器とか壷みたいなものとか固くなったパンとか、
21世紀に生きてる私にとっては絵の中の世界でしかないけど、
当時のオランダの文化を知っていくと、
タイルは運河の湿気から家を守るためのもので、
メイドが家事をしている絵の中で上着の腕をまくっているのは
肌を露出して主人を誘惑するという目的があったりしたそうで、
その奥行きに驚く。
そして、その文化の中で絵を描いていたフェルメール氏にとっては
そんな一つ一つの要素が、
自分らしい絵を作り上げるための決断の結果であるわけで、
小さな1枚の絵に込められた情熱が愛しいと思う。
よかったら新国立美術館に行ってみてください。
音声ガイドを借りると、より熱く展示が味わえますよ。
*12/17まで開催中*
by udanao
| 2007-11-17 01:24
| art